象牙の歴史・日本伝来について
|奈良・平安時代
象牙が日本に伝来した時期は今から約1200年前、奈良時代(8世紀)とされており正倉院宝物の中の“紅牙撥鎮尺(こうげばちるしゃく)”注1 に象牙が素材として用いられたのが確認。当時は珊瑚(サンゴ)や鼈甲(ベツコウ)と並んで貴重な素材として愛用されていました。
※注1 紅牙撥鎮尺(こうげばちるしゃく)・・・国家珍宝帳所載の品。天平時代に用いた一尺の物差し。象牙を染め、その表面を彫ってその表層を紅・紺・緑などの色で着色し文様をあらわしている。寸の目盛りしかなく儀式用と考えらています。
出典:正倉院
|鎌倉・室町時代
足利将軍家に象牙製の棚や卓があり筆や筆刀、菓子の器などにも象牙が愛用されました。この頃は主に茶道具などに多く用いられ、輸入先の東南アジアや中国との海外交易が盛んになり技術的な発展を示しました。
|安土桃山時代
豊臣秀吉が所蔵したと伝えられる“唐物茶入の紹鴎茄子”や、干利体が記した「利休百会記」などから様々な茶道具に象牙が使用されていました。
|江戸時代
象牙技術は高度な発展をなし江戸時代初期には根付・印寵・櫛・簪などが日常の生活用品として一般化し、象牙工芸品が武家・庶民に愛用するようになりました。
出典:東京象牙美術工芸協同組合
|明治・大正時代
象牙彫刻として隆盛期。この時期数多くの名工を生み出し特に三味線の撥(バチ)や糸巻きなどの高級品に使用されました。
|昭和初期・戦後
西欧のパイプ喫煙文化が浸透し、パイプが主な象牙製工芸品となった時期。 また戦後アメリカ進駐軍が根付や印籠などの芸術性に目を付け、数多くの象牙工芸品が海外に流出し特に江戸時代などの芸術性の高い根付などがイギリスやアメリカなど有名美術館で大量に展示されています。長い年月に培われたその卓越した伝統工芸技術は、世界的に認められた証拠です。
|昭和高度経済成長期
象牙製の印鑑を実印とする需要が増加にともない輸入された象牙消費の9割が印鑑に加工される時代です。